
1000文字以内で、推理小説を書いてください。冒頭部分のみお願いします。とある国で内戦が起きて、主人公とその家族は逃げなければならない。一緒に逃亡する人間にも、裏切りの可能性がある。家族のうちの一人は軍のスカウトにあい、家族と離れるか煩悶する。スリル満点だけれども、主人公の機転で家族全員が生存する、ハラハラするストーリーをください。
国境の影
灼熱の太陽が照りつけるアスファルトの上を、私たちはただひたすら走っていた。遠くで響く銃声が、私たち家族の喉を締め付ける。故郷を追われ、難民となった私たちは、国境を目指して泥と埃にまみれながら進むしかなかった。父と母、病弱な妹のアリア、そして私、16歳のアダム。誰もが疲れ果て、希望の光は日差しに揺らぐ蜃気楼のようだった。
「アダム、もう足が…」アリアが座り込んだ。母が抱き起こそうとするが、その腕も震えている。父が周囲を警戒しながら、「もう少しだ。国境まであと少しの辛抱だ」と励ましたが、その顔には深い疲労と絶望が刻まれていた。
その時、後方から一台の軍用車両が猛スピードで近づいてくるのが見えた。私たちは反射的に身を隠す。兵士たちが車から降り、周囲を捜索し始めた。彼らはただの兵士ではない。以前から耳にしていた「徴兵隊」だった。彼らは若い男性を見つけては、有無を言わさず連行していく。
「見ろ!」父が震える声で指差した。兵士の一人が、私たちの潜む茂みに向かって歩いてくる。その視線が、真っ直ぐ私に向けられたように感じた。
「おい、そこの若者!出てこい!」
私たちは息を潜めた。しかし、もう逃げられないことは分かっていた。兵士が茂みをかき分けた、その瞬間だった。
「お兄ちゃん!」アリアが咳き込み、地面に嘔吐した。その大きな音に、兵士の注意が逸れる。彼は顔をしかめ、「チッ、病人のようだ」と呟きながら、私たちを素通りしていった。
その夜、廃屋で身を潜めていた私たちに、さらに大きな試練が訪れた。疲れ果てて眠る父の隣で、母が静かに私に囁いた。「アダム、あの偵察兵、私たちをどこかで見たことがあるみたいだったわ。今日の昼間、水を汲みに行った時に、あの村の井戸端で…」
母の言葉に、私の背筋に冷たいものが走った。私たちの行く先を、誰かが軍に漏らしているのかもしれない。まさか、同じように逃亡する難民の中に、私たちを売り渡す裏切り者がいるというのか?私はすぐに、最近行動を共にしている数人の顔を思い浮かべた。誰もが憔悴しきっていたが、その中に、どこか胡散臭い笑顔を浮かべる男がいたのを思い出す。
翌朝、私たちは再び歩き出した。しかし、状況は一変していた。私たちの行く手には、新たな検問所が設置されているという情報が入ったのだ。まるで、私たちの動きが筒抜けであるかのように。その時、一人の兵士が近づいてきた。
「お前、アダムだな?」兵士はまっすぐ私を見つめた。「お前の体力と知恵があれば、必ずやわが軍の役に立つ。家族も安全な場所へ送ろう。どうだ、我々と共に来ないか?」
兵士の言葉に、父と母の顔に動揺が走る。妹は不安そうに私を見上げた。ここで私が兵士と共に去れば、家族は安全になるかもしれない。だが、それは兵士の甘い罠なのか?そして、もし私が拒否すれば、家族全員が危険に晒される。背後で、あの胡散臭い男が私をじっと見つめているのが分かった。これは、私を誘い出すための罠なのか、それとも…。