最終章(第5章)

配達記録 No. 2026-05-29-001

彼女は窓辺のチェリーセージに手紙を埋めた。土をかぶせる指先に、消えかけたインクの染みが滲んでいた。警察が屋根裏から発見したのは、27通の未配達手紙と、1冊の配達記録帳だった。

「あの日、僕は配達を拒否すべきだった」

記録帳の最後のページには、配達人の証言テープが貼りつけられていた。テープレコーダーの再生ボタンを押すと、砂嵐のようなノイズの後、青年の声が流れる。

「手紙の差出人は…亡くなったはずの……」


第4章

配達記録 No. 2026-05-28-004

雨に煙る団地の804号室。ドアの隙間から差し込んだ手紙が、無人の部屋で微かに揺れていた。配達人はそこで奇妙なことに気付く——封筒の消印が「2036年」と未来の日付になっている。

「これは間違いですよね? 10年後の手紙なんて…」

管理局の職員が首を傾げる中、青年は配達カバンに手を突っ込んだ。中から現れたのは、昨日配達したはずの「2036年」の手紙だった。


第3章

配達記録 No. 2026-05-27-003

「特殊配達物取扱規程 第12条」——死亡通知書は必ず午前中に配達せよ。青年は規則を破り、夕暮れの墓地で1通の手紙を開封した。差出人欄には、3日前に自殺した女性の名前。

『私の死体が発見される頃、この手紙はあなたに届きますか?』

彼の背後で、誰かが息を殺して立っていた。管理局の監視カメラには、青年が独りで手紙を読む姿しか映っていない。


第2章

配達記録 No. 2026-05-26-002

配達カバンが重い。青年は自転車を止め、中を確認する。いつもより3通多い。差出人不明の薄桃色の封筒は、触れると微かな温もりを放っていた。

「こんな住所、存在しないよ…」

地図にない「桜見坂13-3」に向かう途中、彼は交通事故に遭遇する。救急隊員が気付いた——青年のポケットから、血に濡れた手紙が1通、無傷で回収された。


第1章

配達記録 No. 2026-05-25-001

新人配達員・高橋涼太は初配達の朝、管理局の奥で奇妙な箱を見つける。『未配達手紙:開封厳禁』と書かれた段ボールには、27通の手紙が時系列逆順に並んでいた。

「なんだこれ…全部未来の日付?」

彼は好奇心に負け、1通だけポケットに滑り込ませた。その瞬間、管理局の時計が一斉に逆回転を始める。最初の配達先は、彼自身のアパートだった。


構造メモ

  • 各章の配達記録番号が時系列のパズルピースに
  • 最終章で明かされる「27通」が第1章の伏線に
  • 手紙の物理的変化(未来日付・温度・数量)が時間逆行のヒント
  • 差出人の正体は読者の推理に委ねるオープンエンド
おすすめの記事