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ある雨の夜、都心のマンションの一室で、資産家の男性・三島浩一が死亡した。部屋は完全に施錠されており、窓も閉まっていた。死因は首を絞められたことによる窒息死。部屋の中には血痕や凶器はなく、ただ一つ、ビデオカメラが三脚に固定され、テープが巻き戻された状態で残されていた。

警察が到着したとき、テープを再生すると、そこに映っていたのは三島の死体がゆっくりと息を吹き返し、首の縄が自ら緩んで落ち、部屋の隅から何かが後ろ向きに移動していく奇妙な映像だった。映像は明らかに「逆再生」されていた。警察は即座にテープを正再生したが、何も映っていなかった。

事件の翌日、捜査本部に集まった三人の人物が、それぞれの推理を述べ始めた。

刑事・佐伯は、テープの異常を物理的なトリックだと断じた。

「犯人は部屋の外から、特殊な装置で三島を絞殺した。映像は、犯人が三島の死体を動かしながら撮影し、後で逆再生したものだ。部屋の鍵は、犯人が事前に複製したものを使って施錠した。逆再生映像は、犯人が自分の行動を隠すための偽装だ。実際の殺害は、テープが巻き戻される直前に行われた」

次に、三島の秘書だった女性・林が、心理的な動機に基づく説を提示した。

「三島さんは、最近、過去の不正を告白する手記を書いていました。あの映像は、三島さん自身が自ら命を絶つための儀式だったと思います。逆再生に見えるのは、死ぬ瞬間の記憶を逆方向に再生することで、罪の意識を消そうとした心理の表れです。部屋に誰も入っていないのは、三島さんが自分で鍵をかけ、死ぬ直前にカメラをセットしたからです。犯人は存在しない」

最後に、三島の弟・三島直樹が、超常的な解釈を口にした。

「兄は、過去に殺した人間の怨念に取り憑かれていた。あの逆再生映像は、死者たちが兄の死を『巻き戻して』見せているんだ。兄が死ぬ瞬間、部屋の時間が逆流した。鍵が内側からかけられていたのも、死者たちが兄を閉じ込めた証拠だ。物理的な犯人はいない。映像に映る動きは、死者の意志が映像に干渉した結果だ」

三人は互いの説を否定し合った。佐伯は林の説を「自殺願望の妄想」と切り捨て、林は直樹の説を「非科学的」と退けた。直樹は佐伯のトリック説を「現実逃避」と嘲笑した。

部屋に残されたビデオテープは、今も警察の証拠保管庫で、誰にも再生されることなく眠っている。

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