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日記 6月1日 午前2時13分

今日もまた、選択が重なっている。朝のコーヒーを飲むか飲まないかで、世界が二つに割れた。飲んだ世界では、私は遅刻せずに会社に着いた。飲まなかった世界では、信号に引っかかり、遅刻した。両方の記憶が同時に頭の中にある。飲んだ世界の私は上司に褒められ、飲まなかった世界の私は謝罪した。どちらも本当だ。カメラはどちらも映していないはずだ。

監視カメラ記録 6月1日 午前7時42分 自宅玄関

男性(被写体A)はコーヒーカップを手に取らず、玄関を出た。カップはカウンターに置かれたまま。被写体Aはドアを閉め、急ぎ足で階段を下りた。タイムスタンプ7時43分にエレベーターへ向かう。

日記 6月2日 午前1時55分

昨日の遅刻は、飲まなかった世界のせいだ。でも飲んだ世界では、私は定時に着いて、会議で発言した。あの発言がプロジェクトを動かした。両方の記憶が同時に存在するから、今日の私はどっちの自分かわからない。カメラはきっと、私がコーヒーを飲んだ瞬間を映していない。映していないはずだ。

監視カメラ記録 6月1日 午前8時05分 オフィスエントランス

被写体Aは7時58分にビルに入った。エレベーターで8階へ。会議室前で同僚と短い会話を交わし、8時03分に席についた。コーヒーは持っていない。

日記 6月3日 午前3時20分

選択の枝がまた増えた。昨日、電車の中で隣の席を譲るか譲らないか。譲った世界では、相手が感謝し、名刺をくれた。譲らなかった世界では、相手が怒り、押し倒された。両方の記憶が同時に蘇る。名刺の相手は今日も連絡を待っているはずだ。カメラは、電車内の私を映していない。映していないはずだ。

監視カメラ記録 6月2日 午前8時47分 地下鉄車内

被写体Aは吊り革につかまり、隣の席は空席のまま。隣の女性が立っているが、被写体Aは席を譲る動作をしていない。女性は8時49分に降車。

日記 6月4日 午前2時41分

今夜、選択は決定的だった。帰宅後、冷蔵庫のビールを飲むか飲まないか。飲んだ世界では、私は酔って眠り、夢の中で全ての分岐を同時に見た。飲まなかった世界では、私は徹夜で日記を書いた。両方の私が同時にここにいる。カメラは、冷蔵庫の前で私が立ち止まった瞬間を捉えていない。捉えていないはずだ。

監視カメラ記録 6月3日 午後11時12分 自宅キッチン

被写体Aは冷蔵庫を開け、ビールを取り出した。缶を開け、キッチンテーブルで飲み干した。11時47分に空き缶をゴミ箱へ。被写体Aはその後、ソファで眠りについた。

日記 6月5日 午前4時05分

カメラの映像を見た。私の記憶と違う。コーヒーを飲んだはずの朝、飲んでいない。席を譲ったはずの電車で、譲っていない。ビールを飲んだ夜、飲んでいる。量子記憶が、私の現実を二重にしている。カメラは客観だ。でも私は、両方の世界を同時に生きている。どちらが本当なのか、カメラは教えてくれない。教えてくれないはずだ。

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