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構内放送(午前6時14分)
「本日も、失踪された皆様、ご帰宅お待ちしております。帰る列車は、午後11時47分に3番線から発車いたします。乗車条件は変わらず、ただ一つ。『この駅に辿り着いた理由を、誰にも話さないこと』。忘れ物は改札横の台帳にご記入ください」

忘れ物台帳(No. 1847)
品名:黒い革手帳
拾得場所:2番線ベンチ
記入者:田中(自称)
備考:中身は白紙。最終ページに鉛筆で「もう誰も探していない」とだけ書かれている。

監視カメラ 3番線 2023年11月3日 23:41
画面左端に、紺色のコートを着た女性が立っている。首から下げた名札には「佐藤」とある。女性はホームの端まで歩き、足を止める。カメラは彼女の後ろ姿を映す。女性は振り返らず、ゆっくりと身を乗り出す。23:42、女性の姿がフレームから消える。次のフレームには誰もいない。

乗客インタビュー(録音・声のみ)
声A(男性・低め):
「俺は去年の夏、会社帰りに消えた。家に帰るつもりだったのに、気づいたらこの駅だった。帰る列車に乗るには……ここにいる理由を、家族に言っちゃいけないらしい。俺はまだ言ってない。言ったら、列車は来ないって放送で言ってる」

構内放送(午前10時55分)
「忘れ物台帳への記入をお忘れなく。記入のない忘れ物は、所有者がこの駅に留まる意思がないと判断されます。帰る列車は、意思表示をした方のみご乗車いただけます」

忘れ物台帳(No. 1923)
品名:スマートフォン
拾得場所:改札前
記入者:なし
備考:画面は割れている。通知はすべて「不在着信」ばかり。

監視カメラ 改札 2024年2月14日 14:22
若い男性が忘れ物台帳の前で立ち止まる。手帳に何かを書き込む。書き終えると、男性は自分の胸ポケットから同じ手帳を取り出し、台帳の上に置く。男性はカメラに向かって一瞬微笑み、3番線方向へ歩き去る。

乗客インタビュー(録音・声のみ)
声B(女性・静か):
「私は子供の頃に消えた子。両親は今も探してる。でもこの駅に来てわかったの。探され続けている限り、帰る列車には乗れないって。探すのをやめてもらえたら……そのとき、乗れるのかな」

構内放送(午後7時03分)
「本日の帰る列車は、乗車予定者3名を確認しております。条件はただ一つ。『この駅で誰にも会わなかったこと』。会ってしまった方は、残念ながらご乗車いただけません」

忘れ物台帳(No. 2011)
品名:子供用の赤いランドセル
拾得場所:1番線ホーム
記入者:なし
備考:中には折り紙の鶴が一羽だけ入っている。鶴の羽に小さく「またね」と書かれている。

監視カメラ 3番線 2024年6月8日 23:40
画面に三人の影が映る。一人はコート姿の女性、一人は手帳を持った男性、もう一人はランドセルを背負った子供。誰もがホームの端に立ち、互いを見ていない。三人は同時に、ゆっくりと身を乗り出す。23:47、三人の姿が同時にフレームから消える。

構内放送(午後11時50分)
「本日の帰る列車は定刻通り発車いたしました。次回の発車は、来週の同じ時間です。皆様、良い夜を」

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